気に入った一文

昨日紹介した、「ダ・ヴィンチ・コード」と「対岸の彼女」にて特に気に入った一文を紹介します。

まずは「ダ・ヴィンチ・コード」より。

歴史はつねに勝者によって記されるということだ。ふたつの文化が衝突して、一方が敗れ去ると、勝った側は歴史書を書き著す。(中略)
ナポレオンはこう言っている。“歴史とは、合意の上に成り立つ作り話にほかならない”と。(中略)
本来、歴史は一方的にしか記述できない。

この一文を読んだときは、なんだかうれしかったですね。「そうだよ、その通りだよ!」と。というのは、自分も子どもの頃から同じ疑念を歴史に対して抱いていたからです。歴史なんて結局、「信じるか、信じないか」の世界ではないかと。
その歴史が本当に真実なのかなんて目の前で再現するしかないわけで、(そしてそれは不可能なので)そう考えていくと歴史にあまり魅力は感じなかったのです。
そのせいもあって中学・高校と歴史は苦手でした。まったく「知りたい」という欲求が出てこなかった。それよりも理科の原子記号を覚えるほうが楽しかったタイプ。

続いて、「対岸の彼女」にて衝撃的だった一文。

ひとりでいるのがこわくなるようなたくさんの友達よりも、
ひとりでいてもこわくないと思わせてくれる何かと出会うことのほうが、
うんと大事な気が、今になってするんだよね。

ぐっときます、これは。本を読むとなお、この一文の重みが伝わりますよ。

ちなみに読み終わってから気づいたのですが、出版社の売り文句が、「勝ち犬・負け犬」などをキーワードにしていますがそんなものは一切小説には出てこないのでご安心ください。
読んでてもそんな対立はなかったですよ。勝ち負けなんて。この紹介文を選んだ編集者もどうかと思う。

自分だったらこんな感じで。

「どこへも行けなかった」―。
私たちはなんのために歳を重ねるんだろう。
それぞれ生きる女たちが輝く川面で交差する。
対岸を結ぶ橋まで、もうすぐだ。

アーティスト 一条ノリユキ

文藝春秋さん、採用していただけませんかね?(笑)

読書Day

昨晩は横浜、すごい雷でしたね。
雷鳴で目が覚めて(明け方前)、それから今日はずっと本を読んでいました。先日買った「ダ・ヴィンチ・コード」と「対岸の彼女」を読了しました。簡単に感想をば。

まず「ダ・ヴィンチ・コード」。これはなかなかにおもしろかった。
キリスト教に関係する数々のキーワードも違和感なく、というか余計におもしろく感じられました。
かのキリストに関して、「最後の晩餐」で語られるエピソード。
ありえない話ではないですよね。明確に否定する根拠はないし、例の“再会”の理由もこれなら分かる。
まぁ、真実は分からないけれど、もしそうであったらおもしろいなぁ、というのが正直な感想です。
ところでヴァチカンの属人区から追放されるというのはかなり大変なことなのでしょうか。

続けて読んだのはまるっきりカラーは変わって角田光代さんの「対岸の彼女」。
なんと昼間から数時間かけて一気読みしてしまいました。数年ぶりですね、一気に読んでしまった本は。

なににそんなに惹きつけられたのだろうと考えてみると、いまだ冷めていない頭なのでうまく言えませんが、ひとつは、嘘がなく、いろんな意味でちゃんと芯のある物語だった、ということ。
読み終わって、
「結局なにが言いたかったの? 不幸話や不満話を撒き散らしただけじゃないの?」
という最近の文芸界傾向は見られませんでした。
様々な思いが胸をよぎりつつ、読んでよかった、と思えた作品でした。

もうひとつは、丁寧な話の書き方(進め方)にとても好感を持つことができたこと、でしょうか。
作風もこれまた最近流行りの流行ワードを並べ立て、若者言葉で物語る類のものではなく、真摯な語り口でした。かといって堅苦しいものはまったくなく。
その適度なバランスで話は進み、疲れることなく、そこに自分の心をしみこませることができました。
本の中の人物と心情がリンクすることがたびたびありました。(やりきれない思いになったり、殴ってやりたくなったり。(笑))

角田さんの作品は初めて読んだのですが、この違和感なく、その語られている人物と心情が重なるのはすごいですね。
こういう影響力のある作品を自分も書きたいなぁ、と思いました。
この人の作品はどこが違うのだろう。もう少し時間をかけて考えてみます。

とにかく、「対岸の彼女」、おすすめです。とくに女性にはより通ずるものがあるのではないかなぁ、と思います。自分は、これからも読み返したいな、と思う本でした。

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角田光代 「対岸の彼女」

ところで読んでいるあいだ、大人になった葵のヴィジュアルは自分の中ではずっと、「17歳のカルテ」のリサ(アンジェリーナ・ジョリィ)だったのだけど、こんなのは自分だけかなぁ。

  • Posted at 22:46 on Mar 29, 2006
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銅版画家 長谷川潔展

横浜美術館で明日(3/26)まで開かれている、長谷川潔展に行ってきました。

若くして渡仏し(死ぬまでフランスに居を定めていたよう)、日本より海外で絶大な評価を得た銅版画家。
フランス国内を旅しつつ作品を創り、銅版画の新たな世界を切り開いたアーティストです。ちなみに横浜市出身。

作品を見るとき、どうしても創った時期(何歳のときの作品か)が気になってしまいました。「ああ、俺と同じ24歳でこれを描いたのか…」とか。
比べる必要はないのですが、どうしても自分と重ねてしまいます。そして、年齢を追うごとの作風の変化も興味深かった。

彼の作品は、今回初めて見たのですが、異国の地に身を定めてはいても、その創りだす世界には、いわゆる「和」がしっかりと息づいていて、その研ぎ澄まされた華美に驚きました。そして彼の作品にはユーモアもある。

彼の遺した言葉を紹介します。

地球上の目に見える世界をとおさないと、
見えない世界にはいっていくことはできない。
しかし、見える世界のほうがはるかに小さい。
これを私は静物画に描く。

―『白昼に神を視る』より

アーティストって分野は違えど、本質の部分では同じなんだなぁ、と驚いた次第。なんか励まされます。

それにしても美術館に行くたび、無性に絵が描きたくなります。結構感化されやすいので…。こういう刺激って大好き。
自分もパリに行こうかなぁ。夢は果てしなく。

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  • Posted at 22:58 on Mar 25, 2006
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なにか、タガが外れたようで…

映画(「クラッシュ」)からの帰り道、自分でもどうかと思うほど本を買ってしまいました。

…どうすんだ、これ?
まぁ、読むしかないのですが。

・「誰も知らない男 -なぜイエスは世界一有名になったか-」 ―ブルース・バートン
   (友人のおすすめで、やっとこさゲットできました。)
・「対岸の彼女」 ―角田光代
・「ナラタージュ」 ―島本理生
・「東京タワー ?オカンとボクと、時々、オトン?」 ―リリー・フランキー
・「木村料理道 THE NABE キム’s スタイル」 ―木村祐一
・「これだけは、村上さんに言っておこう」 ―村上春樹(絵・安西水丸)
・Tarzan (No.461 3/22 2006号)
   (ストレッチ特集、表紙が超美人さん)


どうしちゃったんだ。「クラッシュ」を観たからなのだろうか?
でも、「クラッシュ」を観たことと、本をドカ買いすることのあいだに、なにか因果関係のようなものは、僕の小さめのキャベツほどの頭では見つけることはできません。

というか、
・「ダ・ヴィンチ・コード(上・中・下)」(文庫) ―ダン・ブラウン
・「コインロッカー・ベイビーズ(上)」(文庫) ―村上龍
を買ったばかりなのに…。

・「黄金比はすべてを美しくするか?
   最も謎めいた「比率」をめぐる数学物語」 ―マリオ・リヴィオ
だってまだ読んでないのに。(思えば、買っても読んでないのはほかにもたくさん… あー…。)

でも、とりあえず、「ダ・ヴィンチ・コード」はおもしろいですね。まだ少ししか読んでないけど、はまりそうです。時間が許せば、ずーっと読み進められる魅力がある。

読んだ中でおすすめがあったらまた紹介したいと思います。
関係ありませんが、初版本を入手できると妙にうれしいです。

誰の中にもある、クラッシュ―

映画、「クラッシュ」を観てきました。朝一で開館を待っての一番乗りで。

これは… 正直うまく言えません。
ただただ圧倒されてしまい、なにか一言で表せるものではありませんでした。まだ観ていない方がおられましたら、私としてはおすすめです。

観たあとに、ここまで放心状態になってしまったのは初めてかもしれません。
映画館を出たあと、雑踏を眺め、空を見上げ、大きく息をついて、ストリートをゆっくり、歩きました。
街路樹の下にあるベンチに座って幾ばくか過ごし、スタバのテラス席で丸一時間ほどただただ空(くう)を見つめていました。

目の前を通り過ぎていく人、そしてこの世界に人間が何人いるのか知らないけれど、彼らがただ愛しかった。
気がついたら、トールサイズのコーヒーはすっかり冷めていた。口に含むと、その黒い液体は苦く、甘く、僕の知らない味がした。あの液体はなんだったのだろう?

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心情風景は、たとえるなら雑踏の中にたたずむ、飲み干されたプラスティックカップ。

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驚き、怒り、不信、安堵、絶望、信頼、放心、哀しみ、愛、、、
―そして僕には想像することすら許されない、“なにか”―。

この空はそれらすべてを分け隔てなく、吸い込んでいる。
それはまるで、神の脳味噌のように。

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行った伊勢崎町にある映画館。小さいですが、好印象の映画館でした。
観てみたいけど、ひとりではな… という方がおられましたらお声をおかけくださいませ。

ちなみに観ようと思ったきっかけは、みんしるさんのブログ。みんしるさんに感謝。

  • Posted at 17:55 on Mar 18, 2006
  • | (Closed)