本屋でピックアップした本ですがこれはすごい。オススメです。
「食品の裏側 ― みんな大好きな食品添加物」
食品添加物を扱った本ですが、危険性を煽る今までの本とは違います。
まず明確にすべきなのは著者の狙いですが、食品添加物の実態を暴いて、その危険性を認識し、避けなさい―
そのようなこの類の書籍に見られがちな従来のスタンスではない、ということです。
著者自身は食品添加物の神、とまで言われた人物ですが、本書の目的は、食品添加物そのものだけでなく食品業界の実態をまず「知ること」、つまり食品の情報公開です。
そこから先は消費者個人が選ぶべき問題であり、まずは「実態」が明らかになるべきであろう、と。そして現状はそうではない。
その「実態」とは食品添加物と食品業界の内側なわけですが、この本には難しい化学名称を並べ立て、これこれにはこのような危険性が指摘されている、というものはありません。むしろ、食品添加物の恩恵にも何度となく注目しています。
商品の原材料名ラベルの裏側はこうなっているんですよ、というのが主なアプローチです。そして目的は、それを正しく知ってから選んでください、というもの。
食品添加物のない食べものを探し出し、それを日々の生活の中で続けるのは大変難しいもの。
ではどうすればよいのか。そんな現実的な視点が常にあります。そこに大変私は好感を持ちました。
読めば次の食事から食に対する見方に新たな視点が加わります。
ひとつ気になったのは、文中に出てくる(帯にもピックアップされている)、虫を原料とした着色料。
これはおそらくペルーなどで生産されているエンジムシだと思いますが、本書では「虫である」ということで注目させようとしている。「これは虫が原料の着色料なんですよ」と。
これは筋違いではないかと思いました。化学的な着色料ではない、天然のものなのに。この一点だけは本書の中で場違いな指摘を受けている気がします。
もしこの着色料を指摘するならば、それが「虫を原料としている」ことではなく、それを着色料にするまでの「加工過程」に目を向けるべきかと。(その加工過程では化学品が使われます。が、そのことには触れられていない。)
ちなみにエンジムシは、古代から衣料の染料などに使われ、現代では安全性を求める動きから天然材料を使う化粧品などに使われています。
そんなところはありながら、一貫して問題にすべきところを「危険性」ではなく「情報公開のされてなさ」にしているところが評価できます。
おすすめの一冊です。
安部司 食品の裏側 ― みんな大好きな食品添加物
ただこれもまた帯がお粗末と言わざるを得ない。
「知れば怖くて食べられない!」
違うだろーーっ!!
編集者はちゃんとこの本を読んだのか? 問いたい。問い詰めたい。
序文に書かれている、
「私が主張したいのは、『添加物の情報公開』ということです。」
編集サイドもそういう著者の意向を尊重していただきたい。
上の帯の体裁でやるなら、
「なぜ、特売品は安いの!?」
が妥当かと。なぜ安いのでしょう? その答えはこの本の中に…。